妊娠中は体力が低下しやすく、風邪をはじめとする感染症にかかりやすくなりますよね。とりわけ、すでにお子さんのいらっしゃる妊婦さんだと、お子さんが学校や幼稚園で病気をもらってくることも多いです。インフルエンザもその一つです。
厚生労働省では、流行時期の冬に入る前のインフルエンザの予防接種が推奨されています。ですが、妊婦さんの場合は、インフルエンザの予防接種をしても大丈夫なのでしょうか?もしもインフルエンザにかかってしまったら、インフルエンザに効く薬は飲めるのでしょうか。
インフルエンザワクチンってそもそも効果はあるの?
インフルエンザワクチンは、そもそもインフルエンザの予防効果はあるのでしょうか。インフルエンザの予防接種をしても、インフルエンザにかかったという方もたくさんおられますから、インフルエンザワクチンは効かない!なんていう噂もありますよね。
実際のところはどうなのでしょう。
厚生労働省のインフルエンザ対策ページ[1]でも明記されている通り、インフルエンザワクチンの効果は完全ではありません。ワクチンを接種してもインフルエンザに感染することはありますし、接種したからといって、接種当日からすぐに効果を発揮するものではありません。
抗体が出来るには約2〜4週間かかり、ピークはおよそ1ヶ月後です。また予防効果についても個人差によるところが大きいのです。
では、何故インフルエンザの予防接種をした方が良いのでしょうか。それは、インフルエンザにかかると、まれに重症化しインフルエンザ脳炎[2]などを起こす場合があり、インフルエンザワクチンはその重症化を予防することができるので接種が勧められているのです。
妊婦さんがインフルエンザワクチンを接種した方が良い理由とは?
もしもインフルエンザにかかってしまった場合、通常はインフルエンザの特効薬であるタミフルやリレンザを使います。しかし、妊婦さんに限っては、インフルエンザウイルス薬は、はっきりと安全性が確認されていないので十分な考慮の上で投与することになっています。
インフルエンザ治療ガイドライン及び産婦人科ガイドラインでは、治療上のメリットが危険を上回ると判断される場合だけ、インフルエンザウイルス薬が投与可能なのです。
妊婦への投与で有害な事柄は発生しなかったという報告も一部でありますが、安全性、有益性に関する研究データはまだ不足している状況です。
ですので、予防接種をせずにインフルエンザにかかってしまうと赤ちゃんへの影響を考慮して薬もなかなか使えませんから、治るまで時間がかかってしまいますし、辛い思いをすることになってしまいます。
万が一、重症化してしまっても大変ですよね。ですから、予防が一番大切なのです。
妊娠中にインフルエンザの予防接種をしても大丈夫?
重症化を防ぐためにインフルエンザワクチンを接種した方が良いといっても、妊娠中は赤ちゃんへの影響が心配ですよね。妊娠中でもインフルエンザの予防接種を受けても大丈夫なのでしょうか。
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンといって、死んだウイルスを使用して作られているので毒性はありません。ですから妊娠中に予防接種をしても母体にも胎児にも影響は極めて低い[3]とされ妊婦さんが希望する場合は予防接種をしても良いことになっています。
なお、ワクチンには防腐剤として有機水銀(チメロサール)が入っているものがあります。チメロサールは妊婦にも小児にも問題がないとされています[4]が、この物質が含まれないタイプのワクチンもありますので、気になる方はクリニックで確認するとよいでしょう。
接種時期に関しても妊娠の全期間において可能とされています。ただし、妊娠初期は自然流産の起こりやすい時期でもあることから避けたほうが良いとする意見もあります。接種する場合は接種予定の医師に予め確認をしておきましょう。
まとめ
1人目のお子さんの妊娠中であれば、インフルエンザの予防接種を無理にしなくても、他にもある程度の予防策がありますよね。例えば、人ごみになるべく行かないようにする、マスクをする、うがい、手洗いを徹底するなどの方法です。
しかし、上のお子さんがいる妊婦さんですと、家族が気をつけていてもやはりお子様が学校など、外からもらってきてしまう可能性が高いですよね。ですから、妊婦さんの生活環境と妊娠週数にもよりますが、なるべく予防接種は受けた方が良いのではないでしょうか。上のお子さんの有無、安定期以降かどうかで考えるのも一つの目安ですね。
[1] 厚生労働省HPより「妊娠されている方へ〜新型インフルエンザワクチンの接種にあたって」P7(http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu091028-01.pdf)
[2] インフルエンザによって起こる脳炎で非常に進行が早い。発熱、痙攣、意識障害などを起こすのが特徴。発症すると死亡率が高く、死に至らなくとも後遺症が残ることが多い。
[3] 産婦人科ガイドライン産科編p39より
[4] http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu090918-04.pdf