このところ婦人科系疾患に悩む女性が増えてきています。何となく毎日体調がすぐれないというケースから長期治療を必要とする重大な疾患のケースまでさまざま。なぜ体調不良や疾患に悩む女性が増えているのか、女性のライフスタイルの変化を見ながら婦人科系疾患について考えてみましょう。
大きく変化し多様化した女性のライフスタイル
女性を取り巻く環境はひと昔前と比べて大きく変化しています。男性と同じように働く人が増え、結婚しても働き続けるケースが珍しくなくなりました。また結婚や出産に対する価値観も多様化し、未婚率や初産年齢の上昇が続いています。
こうした女性のライフスタイルの変化・多様化は女性の健康にも影響を与えていると言えます。たとえば仕事が忙しくて不規則な生活を続けたり強いストレスを受けたりしたことで女性ホルモンの分泌バランスが崩れて生理不順や慢性の冷え症になる、30代後半以降で出産したり出産そのものをしないことで排卵や生理の回数が増え子宮や卵巣の疾患を患う、こういった女性が年々増加しているのです。
ライフスタイルの変化が婦人科系疾患を増やす原因に
たとえば成人女性の10人に1人が抱えているといわれる子宮内膜症は、子宮の中にあるはずの子宮内膜が卵巣や卵管・腸など子宮の周辺の臓器にばらまかれて炎症や癒着を引き起こす疾患です。生理があるたびに症状が進行するため治りにくく、腰痛や下腹部痛が起きたり不妊の原因となることもあります。子宮内膜症が増えている原因は初経年齢の低年齢化・結婚や出産年齢の高齢化・出産回数の減少などによって生涯の生理回数が多くなったことで、発症しやすく重症化しやすい状況になっているためと考えられています。
また30代以上の女性の5人に1人が発症しているといわれる子宮筋腫は子宮にできる良性腫瘍です。生命がおびやかされる疾患ではありませんが、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが関わっているとされるため生理がある期間は成長し続ける可能性があります。症状には個人差がありほとんど無症状の人もいますが、経血量が増えたり生理痛がひどくなったりと日常生活に支障が出るケースが多く、筋腫の種類によっては不妊や流産の原因になることもあります。
その他、見た目の美しさにこだわりすぎるあまり過度なダイエットを行った結果卵巣機能が大きく低下したり一時的に停止したりして生理が止まる、いわゆる無月経になるケースも増えています。
「これくらい大丈夫」という考えが最大のリスク
こうした婦人科疾患の可能性を見つけるには、自分自身の体調を意識してチェックしておくことが不可欠です。たとえば生理の量が急に増えた場合は子宮内膜症や子宮筋腫などが原因となっている可能性がありますし、生理ではない時期に出血した場合は膣炎や子宮筋腫といった良性の疾患の他に子宮頸がんや子宮体がんといった悪性の疾患が隠れている可能性があります。女性の体はとてもデリケートで、婦人科疾患ではなくストレスや不規則な生活によって一時的に生理の状態や生理周期が乱れることもありますが、「我慢できるからこれくらいは大丈夫」と楽観視してはいけません。症状が進んで重症化したり悪性化する前、つまり早期に発見することが重要です、早期発見できれば治療もそれだけ早くスタートできるからです。
生活習慣の改善は簡単なようでなかなかできませんし、10~20代の女性や出産経験がない女性にとって婦人科検診はハードルが高いもの。しかし自分の体を守れるのは自分だけです。現在の自分のライフスタイルを一度振り返って改善点がないかチェックしながら、いつもと違う症状が出たら見逃さずに婦人科へ行くよう心がけてくださいね。