2012年〜2013年現在、風疹がすごい勢いで流行しています。風疹といえば、「三日ばしか」とも言われますが、この風疹に妊婦さんや妊婦さんのパートナーが罹った場合、お腹の赤ちゃんにどんな影響があるのかを解説します。
どのくらい流行しているの?データで見る2013年の風疹!
風疹が大流行!とニュースでも言われていますが、実際のところどのくらい流行しているのでしょうか。そこで下図に国立感染症研究所の統計データがあります。
2013年7月時点のデータで、下のグラフの赤線の部分が2013年のデータです。過去5年と比較してあり得ないくらいの大流行なのがわかります。なんと、7月31日現在暫定値では、昨年一年間の累積報告数の5.5倍となっているのです。
(国立感染症研究所感染症疫学センターホームページ:速報グラフより http://www.nih.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/2132-rubella-top.html)
風疹ってどんな病気?
過去最大の大流行といっても過言ではないくらいの今年の風疹の感染状況ですが、そもそも風疹とはどのような病気なのでしょうか。
風疹[1]とは、風疹ウイルスにより引き起こされる感染症です。日本では昔から「三日ばしか」と俗称で呼ばれています。風疹ウイルスは、接触感染、くしゃみ、咳などの飛沫感染によって感染が拡大していきます。症状は、微熱、頭痛、全身性の発疹が特徴的です。自然感染後は、二度とかからないとも言われていますが、免疫力が低下している時は稀に再発することがあります。
お腹の赤ちゃんに感染する?!先天性風疹症候群とは?
風疹の免疫のない女性が妊娠初期に風疹に感染すると風疹ウイルスが胎児に感染し、先天性風疹症候群(CRS)[2]と呼ばれる障害を引き起こすことがあります。風疹の大流行がニュースなどで話題になっているのはこのCRSを持つ赤ちゃんの急増が懸念されているためなのです。
以下は医療機関から厚生労働省と国立感染症研究所へ届け出られたCRS報告数をもとに表にしたものです。これを見てもわかるように、2013年度は風疹の大流行に連動してCRSも急増中なのです。
(参考 厚生労働省戸山研究班、国立感染症研究所のホームページより作成)http://www.nih.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/700-idsc/4113-rubella-crs-20131113.html)
CRSの3大特徴は先天性心疾患、難聴、白内障です。その他にも先天性緑内障、精神発達遅延、紫斑などの症状も見られることがあります。しかし、CRS自体への治療法はありません。疾患ごとに経過観察をして必要に応じて手術などの方法がとられます。
風疹は予防できるの?どんな対策をしたら良いの?
風疹は予防接種によって予防が可能です。2006年から開始された「MR」という麻疹(はしか)と風疹の混合ワクチンがあり、1歳になったら1回目の予防接種を行い、そして就学前の6歳ごろに2回目の追加接種を行います。
このように今の日本の子供はワクチンで予防できるのですが、ちょうど結婚して子供を産む世代である1980年代前後の男性と女性は、風疹の抗体を持っていない人がたくさんいます。どうしてかというと、MRワクチンの前にずっと定期接種されていたMMRワクチンという「麻疹、おたふく風邪、風疹」の3種を混合したワクチンに副作用が報告され、接種を控えるようになったためなのです。
ですから、まだ妊娠していないご夫婦ならば予防接種をしておいてからの妊娠・出産がCSRを防ぐ最も有効な方法になります。しかし、このワクチンは生ワクチンであるためウイルス自体は弱毒化されているだけで完全に死滅していません。ですから、すでに妊娠している女性には予防接種できないので注意が必要です。
では妊娠していると予防法はないのでしょうか。実は、風疹自体は妊婦さん自身がかかっても大人なので免疫に異常がない限り、無症状か発熱する程度で済みます。しかし、胎児へのリスクがあるのです。妊娠初期の4、5週〜12週までがリクスが高く、50%以上の確率[3]で、赤ちゃんにCRSを発症します。
一方、妊娠20週以降の感染の場合は、赤ちゃんへの影響はほとんどありません。ですから、まずは妊婦検診の初期の血液検査で必須項目となっている風疹の抗体検査をきちんと受け、抗体があるかをチェックし、抗体価が8倍以下の場合は、妊娠20週までは人ごみを避け、手洗い、うがいなどの一般的な感染予防対策をすることが非常に大切です。
[2] 国立感染症研究所HPより先天性風疹症候群(http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/429-crs-intro.html)
[3] 日本産婦人科学会HPより「風疹に関して心配しておられる女性のためのQ&Aより(http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20130625.html)