妊娠が産婦人科で確認されると、毎回の健診で、血圧・体重・尿検査・胎児の超音波検査を行います。それ以外にも妊娠初期には必ずやっておかねばならない検査があります。今回は、その検査を受ける時期、検査の種類、内容についてわかりやすくまとめます。
妊娠初期にする検査はいつ頃するの?
赤ちゃんの心拍が確認できると役所で母子手帳を交付してもらいます。(出産予定日をメモして役所に行きましょう)妊娠初期の検査には、その時にもらえる血液検査などの補助券が必要になりますので、母子手帳を交付してもらった次の健診のときが検査の時期です。おおむね12週までにされる[1]ことが多くなっています。
妊娠初期の検査はどうして検査するの?どんな種類があるの?
妊娠初期の検査は、妊婦さんの健康状態や生活環境を知っておくこと、そして赤ちゃんと妊婦さん自身の体と健康と安全を守るために感染症などをチェックし、治療出来るものは治療をする。そして出産や妊娠を継続していく上で、他に危険因子がないかを探り予防するためにとても重要な検査なのです。
厚生労働省で義務とされている検査項目[2]は、梅毒、B型肝炎、風疹、血液型(ABO式、Rh式)、血算[3]です。その他は任意検査となりますので、医療施設によって検査する内容は多少変わってきます。
ちなみに産婦人科学会のガイドラインでは、厚生労働省で義務づけられている検査の他、C型肝炎、トキソプラズマ、HIV、血糖検査も推奨されています。そして血液検査ではなく細胞診といって内診で子宮口の細胞を採取して検査し細胞を診る子宮頸がんの検査もします。
では具体的にどんな病気や数値を検査するのか解説していきましょう。
・梅毒
血液を介して赤ちゃんに感染し流産や早産を起こす可能性があるので妊婦さんが感染していないかをチェックします。
・B型肝炎
B型肝炎ウイルスの有無を調べます。血液を介して赤ちゃんに感染するおそれがあります。事前に妊婦さんの感染がわかっているとワクチンで赤ちゃんへの感染を予防できます。
・C型肝炎
C型肝炎のウイルスの有無を調べます。こちらも血液を介して赤ちゃんに感染するおそれがあります。
・風疹
風疹の免疫があるかどうかを調べます。妊娠初期に風疹にかかると、流産する確率が高く、また赤ちゃんにも先天性風疹症候群(CRS)[4]という先天性異常が見られる場合もあるため風疹抗体価(HI)で判断します。
・血液型
ABO式とRh式の両方を行います。赤ちゃんと妊婦さんの血液型不適合がないかを調べるためです。
・不規則抗体スクリーニング
緊急時の輸血に備えて、他人の赤血球を壊す抗体(不規則抗体)があるかどうかを調べます。不規則抗体があると同じ血液型でも輸血ができないのです。そういった不適合な輸血を防ぐ目的で行われます。
・ 血算
一般的な血液検査のことで、赤血球や白血球、ヘモグロビン、血小板などの数や状態を調べて、貧血ではないか、出血を止める機能が正常かどうかを調べます。
・血糖
空腹時の血糖値を調べて、妊娠糖尿病がないかをチェックします。
・HIV
いわゆるエイズの検査です。血液を介して感染するため赤ちゃんにも感染することがあるためチェックします。
・トキソプラズマ(当院では任意です)
ネコやイヌなどの糞や生肉などから感染します。稀に流産や早産などの恐れがあるので検査します。
・子宮頸がん検査
こちらは内診で子宮口の細胞を採取して子宮頸部のがんを調べる検査です。
まとめ
妊娠初期は検査項目が多く、異常がなければ特に何も言われないことがほとんどです。ですから、逆に心配になってしまう方も多いのですよね。事前にどのような検査をどのような目的でしているのかということを知っておくとちょっと安心できますよね。
[1]産婦人科ガイドライン産科p3表1より
[2] 産婦人科ガイドライン産科p6解説より
[3] 血算とは血液算定の略で、赤血球や白血球などの数を数えて貧血や病気の徴候がないかを調べることである。
[4] 妊娠16週まで(特に8週〜10週)の間に感染すると胎児の発達異常を起こすリスクが高く子宮内胎児死亡もありうる。よくみられる異常には、子宮内発育制限、白内障、網膜症、聴力障害、心奇形などがある。(メルクマニュアルよりhttp://merckmanual.jp/mmpej/sec19/ch279/ch279c.html?qt=先天性%20風疹%20先天性%20風疹%20&alt=sh)